藤浪という投手
藤浪晋太郎という投手は、自分にとって非常に思い入れのある選手である。
大阪桐蔭時代の2年にポテンシャルの高さを評価されながらも、大阪大会の決勝戦で打たれて敗戦した時からずっと見てきた投手だからだ。
そこから春の選抜に出場し、大谷翔平と春の甲子園で初戦で対決したときは、ライトスタンドで試合の行方を見ていた。
スライダーを観戦していた場所の近くまで飛ばしてきた大谷は、当時からすごい選手ではあったが、試合を経験する中で勝てる投手へと変貌していく藤浪のほうが、個人的には魅力的に見えた。
それから1試合1試合成長していく姿を見ながら、春夏連覇、阪神へドラフト1位で入団するという、阪神ファンにとってはたまらない展開になったのは、誰もが知るところだろう。
1年目から二桁勝利を上げ、3年目には14勝して、150kmを超える速球をバシバシアウトローに決める投球を見て、阪神のエースになると思っていた人も多かった。
実際に自分も、藤浪が投手として完成するには時間がかかると思っていたが、あまりにも順調な成長速度だったため、そこに慣れてしまっている部分があった。
しかし4年目には調子を落とし、5年目は制球難で凄まじいバッシングを浴びることも増えてきた。
イップスだという人もいたし、技術的な問題だという人もいた。
個人的には後者の要素から派生して、精神的な面にも影響しているという見立てだ。
身長があり、腕も長く、癖のある身体の使い方が染み込んでいるが故に、非常に不器用な投手だと思う。
一方で、感覚と理論を組み合わせて、自分の中にあるものを掴んでいくという意味では、非常に頭の良い投手でもあると思う。
個人的には、頭の良さと高い理想と、不器用なフィジカルのギャップこそが藤浪という投手の魅力であると思っている。
ああだこうだ言う人も多いが、あの手のタイプは正直、自分の中で考え、自分と向き合い、必要ならば外部に助力を求めるバランス感覚を持っている。
だからこそ、結果が出ないことをどうこう言いたくないし、安易に言うことはしたくない。
今年に入ってからも、結果が出ないがゆえに、去年と同じで悪いという批判を浴びることもあった。
しかし、ボールが右打者のインコースにとんでもなくスッポ抜けることは前年に比べれば、極めて少なくなり、メカニック的にはかなり追求してきたことがわかった。
また結果が出なかった理由も、コースコースにボールが行き、それがボールと判定されるとストライクを取りに行ったところを狙われるというパターンで、去年の投げる状態ではないという状態ではなかった。
もっとも力をセーブして投げているため、球威が落ち、打たれやすくなっているということが現在の藤浪の最大の課題点であると個人的には考えている。
故に、今日の横浜戦のように合わせられると、痛打が続きやすくなる。
とはいえ、この課題点は、一朝一夕でどうにかなるような問題ではない。メカニックが絡む上、体格上の難しさ、個人要素が大きすぎるからだ。
故障等で投げられないわけではないので、このまま1軍で先発し、打者と対峙しながら、自分の中で何かを掴んでいくしかないと思う。
昔からそういう風に自分を高め、育ててきた投手であると思うので、投げ続ければ良くなると思っている。
そしてフォームがしっかり自分のものとなれば20勝もできる投手になれると思うので、技術を高めつつ、粘り強く投げてほしい。
個人的には、粘り強く応援していきたい所存だ。
2勝目おめでとう。